2020.01.07

体験入寮とカリキュラム入寮

 令和元年もそろそろ幕を閉じるころになりました。毎年、月日の過ぎる速さに驚き、体も気持ちも追いつかなくなりました。振り返れば、今年も楽しいこともうれしいことも苦しいことも悩むことも落ち込むことも励まされたこともいろいろありました。量りにかければうまくいかないことの方が多いようにも思いますが、ありがたいことに人は点在する小さな幸せをたどりながら生きていくことができるのだと思います。年末年始、子どもたちにとっては楽しみの多い日々が続くと思います。子どもの笑顔は何よりも親の幸せでもあります。どうぞ健やかによいお年をお迎えください。

 今回は「体験入寮とカリキュラム入寮」のお話です。先日専攻科2年生のカリキュラム入寮6週間が無事終了しました。今回は連続6週間の入寮に取り組む生徒が多かったのですが、高等部2年生での体験を生かして、みなさんとてもリラックスしていました。特に後半は、仲間との生活を楽しみ、役割にも自分から取り組み、精神的な余裕が見られました。それでも山場の3週目、4週目を乗り切るときには、イライラをぶつける様子や心が晴れない表情を見せる生徒もいましたが、少しの励ましや見守りで5週目、6週目を迎えカウントダウンを待つと同時に、「さみしいよ~」と名残を惜しむ言葉も聞かれました。最後の晩餐は「味噌ラーメン」をリクエストしたようで完食後、お疲れ様を行いましたが、やりきった感があり、一人一人に頑張ったことが書かれたカードが手渡されましたが、みんな晴れやかな表情で受け取っていました。

 翌週は、専攻科から入学された生徒の1週間の体験入寮が始まりました。入寮に対しては気持ちもそれぞれで楽しみにしている方も、受け入れている方も不安と葛藤している方もいました。この機会に生活面での見直しをすることが大きな課題になります。家庭では出来上がっている生活習慣を見直し、改善すべきことがあれば支援することになります。生活自立をめざすための生活体験ですので、持ち物管理や就寝起床のスケジュール、洗顔入浴、衣服の着脱、洗濯掃除、食事、手伝いなどなどの生活は多岐にわたります。経験しているようでしていないこと、させていないことも山ほどあります。今更ですが、「生活ができる人」をめざして育てることは特別支援教育の基本中の基本になることを実感します。そのためには体験が必要になり、体験を重ねて経験値をあげていくことで達成されます。青年期の生活改善は家庭では難しいのも現実です。できあがった生活習慣は環境を変えずに直すことはとても難しいからです。仲間との共同生活の中で刺激されて自分から気づき、目標に向けた意欲を持つことが原動力になると思います。親や教師よりも仲間の存在が大きくなる時期ですから、目指す友達や先輩の存在がとても大切になります。「先週、○○先輩が作ってくれた味噌汁、美味しかった。」と聞こえるように言った独り言をしっかり聞きつけて、「じゃあ、僕も頑張ります。美味しいみそ汁のつくり方を教えてください。」と言ってきました。こうした体験が来年のカリキュラム入寮での実りある経験につながるようにと願います。できるならば、高校生から経験してほしいとも思います。先の2年生たちも高等部の体験の時は、もっと緊張していましたし、3週間ずつに分けて経験を重ねてきましたが、精いっぱいだったと思います。もっと遡った先輩の中には高校生の時のカリキュラム入寮では後で円形脱毛症ができたけれど、その後の体験入寮を経て専攻科のカリキュラム入寮は心待ちにして持っていくものも遊び道具も含めて自分で用意するようになったという事例もあります。卒業生が「将来はグループホームに入りたいです。」というのを聞くと、社会人になってからこそ生きる経験なのかもしれません。苦しい思いも経て、仲間と共同生活を楽しめる経験を重ねることは学生時代に是非すべきことの一つだと思います。

極寒に 灯り集めて ツリー有り

                      2019.12.15