2019.03.28

高等部・高等部専攻科一貫教育について

 卒業式、修了式が無事終わりました。桜の蕾が膨らむ晴天の良き日でした。バッサリと枝が切り落とされ、さっぱりしたと言うべきか、あっさり観を呈した姿の桜を見ながら、記念写真が撮られました。学部毎、卒業生を中心に卒業生の保護者の方、在校生も一緒の集合写真です。全員が揃うシャッターチャンスはなかなかありません。「こっちですよ。」「はい、もう一枚」の声が何度も続きました。どんな表情が写ったでしょう。

 今年は、高等部から2名、専攻科から9名の生徒が社会人として巣立ちました。「仕事を頑張ります。」「クッキーを作ります。」「PC入力をします。」「お給料を貰って、お金を貯めて、家を建てます。」「お嫁さんを貰います。」「仲良くします。」などなど夢と希望を持って一人一人ご自分の道を歩きはじめました。

 さて、今回は『高等部・高等部専攻科一貫教育について』のお話です。本校に専攻科が設置されたのは1979年です。創設者である三木安正先生が、高等部卒業後の青年後期の教育は知的障害を持った子ども達にとっても重要であるとし、申請しました。視覚障害や聴覚障害の支援校では、職業技術を身に付けるための専攻科は存在していましたが、知的障がいの方のための専攻科は殆どありませんでした。期間も2年で短期大学のイメージでしょうか。三木先生は、中学、高校と3年間の成長を考慮してのことだと推察しますが、申請後「3年間が認められたよ。」ととても嬉しそうだったと、当時の様子を本校の理事である上野一彦先生からお聞きしました。

 本校は、高等部だけでなく高等部専攻科の3年間+3年間の一貫教育を行うことで、子どもから大人へ、学校から社会への移行支援を一人一人の生徒の力に応じて行います。

 高等部から入学される方にも、本校中学部から進学される方にも義務教育後の6年間の一貫教育の重要性についてご説明はしているつもりでいます。知的障害を持つ方の特徴の一つは、ゆっくり成長することですので、何より経験、体験の中での学び、繰り返し実践できることが成長を手助けします。見ること、聞くこと、行くこと、作ること、自分で感じること、人に伝えること、とにかくやってみることが大事です。その為には時間が必要なのです。私は、どのような障害を併せ持つ方にも、共通して自分と向き合う時間は必要だと思っています。

「高専6年間の一貫教育に賛同する生徒保護者のみ入学させるべき。」「各家庭の事情もあり、生徒も一人一人違う。」「本人の気持ちに寄り添ってばかりいては、遊んでいるだけで無駄な時間になってしまう。」「専攻科からの職場実習では遅すぎる。」「のんびりしすぎ。公立校と同様のペースで速めに進めてほしい。」など本校に入学後も、保護者のみなさんからさまざまな思いやご意見をお聞きします。本校は現在どちらかというと一人一人の生徒、保護者の希望に合わせた移行支援をする努力をしています。専攻科を設置している私立特別支援学校でも、希望者だけが専攻科に進学する学校と5年間の一貫教育を実施している学校があります。

 最近注目されている、福祉型専攻科は、2年間の自立訓練と2年間の就労移行支援を合わせて社会参加し、力を発揮できる人を育てることを目標にしている施設が多いようです。「カレッジ」という魅力的な響きもあり、入所希望される方は増えていると聞きます。そうした高等部卒業後の学びの場が増えることはとても良い事だと思います。そうした環境の中、本校専攻科にも他校高等部卒業生の進学希望者が増えています。高等部からの6年間の一貫教育を基本にしている本校にとって、さらに卒業後の就労継続支援、余暇活動支援、相談支援などアフターケアのことを考えると、1学年10名の定員がふさわしいと考えます。高等部では職業教育中心ではない人間形成のための教育支援に重きを置き、自己選択や自己決定ができるように自己肯定感を持って心豊かに生活する人の育成を目指します。中川信子先生の「障害があるからと決めつけるのではなく、普通に青春時代を過ごすという視点を持つ」という考え方が旭出学園の支援のあり方にもぴったりだと思います(*)。専攻科では、一人一人に適した就労ができるように、仲間との共同生活が楽しめるように、大人として、社会人としての自覚を持てるように教育支援をすることが肝心だと思います。将来を見据えた本校の教育支援をできれば高等部から、さらには思春期の中学部から受けて頂きたいと思っています。今後も様々な考えを共有しながら、学校と保護者が協力して、小さな学園だからこそできる大きな支援を継承して参りたいと思います。

 今年度もたくさんのご支援とご協力を頂きました。ありがとうございました。

老木の 幹にちらほら 花愛し

                      2019.3.28  

 (*)中川信子先生の執筆された

親の気持ち―理解し、支えるために

『高等部卒業後すぐの就労に積極的でない保護者』

  発達教育 2018年9月号   発達協会

   より抜粋させていただきました。