小学部の梅の実も大きく色づき、子どもたちは脚立に乗って実を捥いで梅ジュース作りをしました。曇り空から雨が降る日も続いています。梅雨明けはまだまだ先のようですが、6月は小学部の校内合宿、中学1年生、高等部1年生の校内合宿、専攻科の校内実習など学部毎の活動が充実してくる時期になりました。今年は高等部の3年生の修学旅行も6月末に計画されています。
さて今回は「避難訓練、防災訓練」のお話です。
「高等部まきの館1階、調理室から火が出ました。先生の話を聞いてグランドに避難してください。これは訓練です。」放送が繰り返されました。グランドに避難し、訓練を終えて戻ると調理室がすごい煙でした。するとN君が真剣な顔で言いました。「お茶はどうすんの?」「避難しないの?」「煙にやられる!」これまでにもまきの館調理室から火事になったという設定で避難訓練を行うことが何度もありましたが、お茶の心配をしてくれた生徒は初めてです。発煙筒から出る煙は無害のものなので教員もそれを思いついたことはなく、驚くと同時に「よく気がついたね。」と褒め、廊下にお茶の入ったやかんを5つ避難させました。火事の時に逃げる練習をすることが分かっていて余裕もあり、自分がさっき責任を持って作ったばかりのお茶がどうなってしまうのかを心配したのでしょう。避難訓練が終わり、教室に戻り、避難する時に注意することを確認しました。するとN君、「鳥はどうすんの?」と質問しました。教室で飼っている十姉妹の事も心配になったようです。気付くことも配慮することもどんどん広がっている様子でした。次は鳥かごを持って避難することになるかもしれません。
避難訓練は毎学期毎に計画して実施しています。火事や地震を想定した訓練です。年に一度くらいは非常ベルを間違えて押してしまうハプニングもあったり、それは時と場所を選ばないのでまさに非常時で良い訓練になっています。非常ベルがなったら静かにする、放送を聞く、先生の話を聞いて行動することなど、学部が上がるごとに納得している生徒が多く、避難もみんなと一緒にスムーズに行えています。昼休みに事務所によく遊びに来るIさんは「非常ベル怖かったんだ。でももう大人だから我慢できる。」と昔を振り返っています。そういえば中学部時代、音に敏感だったIさんは避難訓練が苦手でずっとドキドキしていましたし、泣いてしまうこともありました。大人になった今は苦手だけど我慢できるし、「逃げれば大丈夫と分かったから。」と話していました。練習の積み重ねや日頃の意識がいざというときに行動できるかどうかにつながります。練習は何に対しても大事であり、何のために行うかも知ることも大事だと思います。
2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災の日、本校体育館では学校全体保護者会を行っていました。今までにない大揺れに会を中断し、当時担当していた専攻科のクラスに戻ると、生徒のみなさんは放送を聞き、机の下にいました。グランドに避難してからもまた強い地震を感じ、まるでグランドが船のように横揺れしていました。時計もメトロノームのように揺れていました。怖さに泣き出す生徒もいましたがいつも通りグランドに集まり寄り添って解散までの長い時間を過ごすことができました。近くに保護者の皆さんがいてくれたことも幸いしたと思いますが、いつもと違う時にもいつものように過ごせる力は日頃の練習からしか培われないと思います。今回は「まだ遊びの時間なのにグランドに行きたくないよ!」「ベルの音は嫌いだ!」と怒ったり泣いたりしている小学部のみなさんにもいずれ練習の成果が見られる日が来ると思います。
災いは忘れた頃にやってくると言いますが、心も体も防災用品も備えることを怠らないようにしましょう。そしてご家庭との連携も不足の無いようにしていきましょう。
ぷくぷくと 葉陰の青梅 何を待つ
2017.6.13