2016.04.01

平成27年度田村校長のひとり言まとめ

 

平成28年3月「旭出学園は不滅です!~感謝に代えて~」

  年齢を重ねてきますと、その時は何気に聞き過ごした言葉や出来事が巡り巡って今の自分とのご縁になっていたと気づかされることが時折あります。

私の父は船員で、大型タンカーの通信士として働き、長期間家を留守にする仕事をしていました。帰宅時には、当時はまだ珍しかったハーシーチョコレートやグレープフルーツ、いかにも異国臭が漂う人形などのお土産が楽しみでした。そんな父が「うちの会社には徳川のお殿様がいるんだよ。」と自慢げに話していたことを何と無く覚えていました。父の会社は日本郵船という船会社でした。そのお殿様が徳川理事長だと結びついた時は驚きました。勿論、父の話に出てきただけなのですが、人生の後半に父が自慢していたお殿様とご一緒に仕事をさせて頂けたことは私の自慢話の一つになりました。

私は障害児教育をはじめから目指したわけではなく、学生の頃は悩んだり躓いたりする人に寄り添う仕事がしたいとただぼんやりと考えていました。どう学ぶかもわからずわからない時は人にも聞けず、とにかく東京に行こうと学芸大に入りました。そこで上野一彦先生と出会い、旭出学園に出会いました。

小学部に勤務して何年かしてのこと、前校長の星先生に理解語はあるのに発語がないお子さんの指導を相談した時手話が役に立つことを教えてもらい、国分寺市の手話講習を受けました。日本ではマカトン法がまだ確立していない時代でした。そこで出会ったのが主人です。彼はテニス好きの聴覚障害者でした。上野先生もスキーやテニスがお好きでしたので先生に誘われてテニスを続けていたことでテニスの話で盛り上がったことがそもそものご縁だったかもしれません。若い頃には振り返る余裕もなく、ただただ目の前にあることをこなすだけの生活でしたが、ご縁に恵まれご縁に支えられて生かされてきたことが還暦を過ぎた頃やっと気づきます。人生は思うよりも短く、やれることにも限りがあることも。自分を笑える人になろう、楽しく時を過ごせる人になろう、30数年旭出とのご縁を結びつつ子どもたち、そして保護者のみなさまから教えてもらったことです。

本日、陽春のよき日に無事卒業式修了式を執り行うことができました。そしてこの春、高等部から2名、専攻科から10名の方々が社会に巣立ちます。どの道を進もうといつかまた交わり、語り合い、懐かしみ、励まし合える仲間です。集いの場が学園内にあり続けることが大事だと思います。卒業生から学びご縁を切らさず活かすことで学園は成長し続けるからです。いつもあたたかい励ましとご協力を頂いた卒業生の保護者のみなさまに心より感謝申し上げます。今後は「同窓会旭出あおば会」へのお力添えを頂きたくお願いいたします。

  私事ですがこの3月を持ちまして校長職を退任させていただきます。子どもたちからはパワーをもらい、保護者のみなさん、そして同僚のみなさんからはたくさんの支えをいただきました。笑いと涙に包まれた忘れられない5年間でした。ありがとうございました。4月より特任教諭として引き続き勤務させていただきますので今後ともよろしくお願いいたします。

   *保護者の会だよりに掲載いたしましたものを一部書き加えました。

 

平成28年3月「いよいよ三月」 

 小学部の庭では「おおいぬのふぐり」が水色の小さな小さな花を咲かせ春の訪れを教えてくれています。その花の名前の由来を知った時には正直「えっ!」って思いまいたが、小学部の子どもたちと同じくまずは「かわいいなー」と思える花です。小学部のお庭は昭和の香りが漂い築山やトンネル、滑り台、紅い梅も白い梅も咲き始めています。梅のほかにも実のなる木を植えて季節を感じ収穫ができるようにと三木先生がデザインしたそうです。ぶどう棚があり、柿、蜜柑、甘夏も毎年収穫できます。昨年の秋には柿が鈴なりで収穫した柿をリヤカーに載せて昼休みに配ってくれました。築山には蓬が自生していて毎年5月には蓬を摘んで団子を作る学習をしています。1学期は着席して過ごすことができなかった1年生たちもやることの見通しが少しずつ持てるようになりました。先日は友だちと手をつないで大泉のケーキ屋さん「トレント」に行きケーキ作りを見学したり、好きなケーキを買ってきたりしました。イチゴの大きなホールケーキをつくるところを見せてもらった時にはじっとよく見ていて、「ハッピイバースデーだね」と言ったり「ふー」とろうそくを消す真似をしたり、おめでとうと手をたたいたり、しっかり見学できました。帰り道は一人ずつ箱に入れてもらったケーキがだんだん大きく揺れ、ぶつかり、「そーっと」「ぶつからないように」などの声掛けよりも楽しさが勝ってしまいました。お弁当の後のデザートになりましたが、予想通りばらばらになっていました。それでも自分の選んだケーキに満足そうでした。ばらばらになったケーキを何とか形を整える子、気にせずパクパク食べる子、お母さんにお土産にする子、「ケーキつくるの見たよ」と話したり、「どんなケーキを買ったの?」と聞かれて応えたり家での会話が弾むようにと思いながら教員は一人一人の子どもたちのエピソードが連絡帳に綴られたことでしょう。

 先週末に行いました「展示発表会」にたくさんの方々にご来場いただきました。ありがとうございました。小学部、中学部、高等部,専攻科の図工や美術作品、総合学習のまとめが体育館に展示されました。中学部3年生の絵本作りは10年を超えて続いている作品展示と発表です。個性あふれる力作ぞろいでした。今回目新しかったのは専攻科のアニメーション作品です。いろいろな素材を使い一コマずつ撮影した作品はどれも楽しく仕上がっていました。高等部のもち米づくりの総まとめとして「和風喫茶ペンギン」ではつきたてのお餅を提供しました。餅つき体験もしてもらい、柔らかいあんこときな粉餅が完売となりました。専攻科の模擬店「ラーメンつるつる」も100食はあっという間に完売でした。次回にいかす反省会をすることになるでしょう。

 いよいよまとめの年度末、三月になりました。一年が本当に早く感じます。

 

平成28年2月「成人を祝う会を終えて」 

 1月15日(金)、本校高等部専攻科の2年生9名を主賓に迎え、成人を祝う会が行われました。成人を迎えた方々の晴れ着姿は本校ホームページにも掲載されています。是非ご覧ください。

 本校は小学部から中学部、高等部、さらに専攻科を設置し、児童から成人までの一貫教育を行っています。専攻科は青年から成人への移行と学校から社会への移行を担う特色ある学部です。現在、知的発達に障がいを持つ方のための特別支援学校で専攻科を設置している学校は私立特別支援学校と鳥取大学付属特別支援学校だけです。本校の専攻科は1979年に認可されていますので36年の歴史があります。

 成人を祝う会は、当初から行われてきましたが、近年は中学部高等部と合同で行う新年の行事として大事にしています。成人、大人になることの節目を仲間と共にお祝いすることはご本人だけでなく、保護者や後輩にとっても心に残るものになります。今年も9名の方々の成長の記録をスクリーンに写真を映しながら紹介し、後輩からの祝辞の後、一人一人が「成人の誓い」を発表しました。

 「実習をがんばり、就職したらお父さんとお母さんをレストランに連れて行きたいです。」という親孝行な話や、「お化粧や身だしなみに気を付けてもっとおしゃれがしたいです。」「お金を貯めてみんなで旅行に行きたいです。」と希望や目標の話や、「お父さんお母さんお姉さん、おじいちゃんおばあちゃん、おじさんおばさん、いとこのお兄さん、、、、、、」これまでのことを振り返りたくさんの方々に感謝をするなど一人一人の思いが詰まった発表でした。みなさん練習もしていましたが、当日たくさんの人たちの前で堂々と発表している姿を見るだけで一つ階段を上がったことを実感できました。大人になったことを本人だけでなく保護者の方々も認識する機会になったと思います。かっこいい晴れ着に憧れいつかは自分の番が来ると感じる後輩も多いと思います。目標に繋がる式でもあります。

 式典の後、専攻科生で催す祝いの会は、昼食などの手配や準備を1年生の保護者にお願いしています。「来年はお子さんの番ですね」ということで一緒に祝ってもらうためです。高校生や中学生の保護者にも呼びかけています。「昨年の方が感動しました、自分の番になると気になることが多くて、、」との感想をお聞きしたり、「成人を迎えられたことはうれしくてこの場では喜びしかないのですが、街に出るとやはり悲しさも感じます。」そんな言葉もいただいたこともありました。ここがゴールではありませんが、喜びを共に分かち合う経験はご本人にも保護者の方にも、これからの人生を応援してくれる出来事になると信じます。今年もみんなでお祝いできたことをうれしく、そしてありがたく思いました。

 

平成28年1月「年賀状」

 「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」

冬休みが終わり、学校に子どもたちの声が戻ってきました。新年の挨拶を丁寧にしてくれる子どもたちのうれしい姿です。

 今年も、年明け早々にたくさんの年賀状をいただきました。ありがとうございました。遠くの親戚、恩師、これまでの長いといえば長い人生の中でそれぞれの場所で時間を共に過ごした友人、娘や息子を通してお付き合いのある方々、職場の同僚、そして旭出の子どもたちと保護者のみなさん。圧倒的に多いのは勿論旭出の子どもたちであり、卒業生からいただく年賀状です。

 「また旅行に行きたいです」「おべんきょうをがんばります」「漢字検定8級をがんばる」「たたむ仕事が好きです」「またお祭に行きます」「あおば会で会いましょう」一生懸命書いたお名前など、がんばれという気持ちを込めて年賀状を送っているつもりですが、それ以上に子どもたちからいただく文字や絵に励まされています。目に残るものの強さを感じます。笑顔の写真、家族写真からも、そこにいる誰にとってもよい年となることを思います。一人一人と繋がっているそのひと時がうれしいのです。

 本校は、今年度より住所録の各家庭への配布を取り止めました。個人情報保護のための対応ですが、長年の風習でもあり情報を共有できないことも少しさびしく感じます。私立校として様々な地域から通学されている子どもたちですので、「同じ地域に先輩がいる」など住所録から得た情報によって親近感が得られていたと思います。子どもたちにも住所録を活用して友だちや先生に季節の便りなどを出すことを薦めてきました。合宿先からの便り、暑中見舞い、年賀状も学習の一つと考えていました。

近年は個人情報の外部への流出の危険性に対応なく見過ごすことはできない時代です。住所録の配布中止やむなしと少々後ろ向きな考えに囚われていた時、保護者から「住所録をいただけない新1年生が年賀状を出したい場合はどうしますか、不公平ではありませんか。」とのお尋ねがありました。考えを整理するよいきっかけになりました。過剰な情報を均一に配信するのではなく欲しいと思った情報は自ら得て、管理するのが現代流です。繋がりたい人やものには自分から繋げばよいのです。自ら声を上げて自分の意志で繋がることができるのですから、「年賀状を出したい方には直接住所を聞いてください。または学校に送ってください。お手元に届くようにします。」このような答えになりましたが、いかがでしたでしょうか。たかが年賀状ですが、されど年賀状です。人気グループ嵐も言っていましたが「もらうとうれしい」ものです。

ちなみに今年の旭出学園の年賀状は生徒の絵と毛筆の作品にしました。350通送付しました。中学生の描いた日光東照宮の三猿と高等部の生徒の毛筆の挨拶にしました。以前から児童生徒の作品でごあいさつしたいと思っておりましたので念願がかないました。今年はピンポイントでお願いしてしまいましたが、次年度は校内で「年賀状グランプリ」を公募して選考できればと考えています。旭出っ子の伸び伸びとした一面がお届けできたのではないかと思います。

 

平成27年12月「プレゼント」

 師走に入りました。街はにぎやかにクリスマス色で飾られています。10月はハロウィンのオレンジ色でしたが、11月末からは赤と緑、金銀ピカピカキラキラが主流になりました。

 旭出学園でも各部クリスマス会をしています。小学部にはサンタさんも来ます。お菓子やクリスマスカード、一人一人がサンタさんからプレゼントをもらいますが、自分の番を心待ちにしていい姿勢になったりする姿がかわいいです。「教頭先生からもらったよ」と報告してくれる子もいます。お楽しみのケーキは予めイチゴショートかチョコレート、白か黒の中から好きな方を選んで注文します。迷う子もいますが、自分で選択することはこれからの人生の節目節目で必要なことです。選ぶということはどちらかを捨てることであきらめることです。この行為を幼い頃から経験すること、誰かが選ぶのではなく自分で決めること、あきらめると同時に選んだものに満足すること、とても大切な学びです。

 高等部でのプレゼント交換は、まず誰にプレゼントを渡すかを決めます。予算は一律1200円以内などに設定します。くじ引きや音楽に合わせて回すというやり方でプレゼント交換をしていたこともありましたが、自分が好きで買ったプレゼントが友だちの手に渡ることが納得できなかったり、もらってもうれしくないものだったり、プレゼントを買う時点で何にするかがわからないなど困る点が出ていました。解決策として、プレゼントを誰に上げるかをくじ引きで相手を決めることにしました。誰からのプレゼントかは内緒のお楽しみです。

相手が何を好きかわかりやすい子もいれば、ちょっとわからない子もいますので連絡帳を通して保護者から「○○さんは何がお好きでしょうか?」などの問い合わせがあったりしました。そこで、みんなの好きなものほしいものを示すなどして、友だちのことを考えてプレゼントを選んでお店で買うようにしました。最近では、AKBや嵐などのアイドル、ディズニーやジプリなどのアニメのキャラクター、シールや文房具、UNOやカード、戦隊もの、電車、車など聞き出すと好きなものをそれぞれがしっかり持っていることがわかります。自分の好きなものと同じように友だちの好きなものを知ることも大切な学びです。「友だちが喜んでくれるかな」と人を思う具体的な体験を積み上げていくことで、「喜んでもらうためにはどうすればいいかな」と人を思いやることができるようになるのだと思います。

 さて今年のクリスマスプレゼントは何にしましょう。会話がめっきり少なくなった家族に思いやりのあるプレゼントを選べるのか自信がありません。大人になってからこそ好きなものを知っている人との関係を大切にしたいですね。

今年も大変お世話になりました。どうぞよい年をお迎えください。

 

平成27年度11月「修学旅行」

 10月下旬、高等部3年生の修学旅行に同行してきました。今年は宮城、山形、福島、栃木の南東北を巡る旅でした。ちなみに私の出身地の栃木は南東北ではなく北関東なのですが、そこは生徒の拘るところではありませんでした。温泉地を巡り、紅葉を楽しみ、お城や鉄道車両センターやサファリパークなど3年生9名の見たい所や食べたいものを巡り共に体験する、高校生集大成の旅となりました。それぞれに苦手なものも大好きなものも譲れないものもあるようでしたが、友だちの好きなものを一緒に体験し、共感する旅になりました。仙台のアンパンマンミュージアムに行ったときは、「アンパンマンは幼稚園です。入らない。」と言っていた生徒も文句を言いながらも売店でアンパンマンのCDを購入するなど、気持ちと裏腹な言動もありましたが、仲間と共に楽しめた様子でした。動物が苦手な生徒も大好きな生徒が触れ合い広場に入ると励まされてウサギに餌を上げることもでき、「手が震えました。」と言いながらも達成感を得たようです。鉄道好きな生徒は、郡山車両センターで職員の方から話を聞き、新しいカフェ列車に乗せてもらい、興奮気味でした。友だちが喜んでいると一緒に喜べるところがうちの生徒のとても良いところだと思います。秋保大滝を見学したときは、滝の雄大さと紅葉のきれいさ、景色に見入る様子があり滝の音を聞きながら景色を楽しむ時間がゆっくり流れ誰も飽きずにいたのは意外でした。

高等部3年生の修学旅行は毎年3年生が行きたい所を話し合い、場所を決め、見たい所や行きたい所、食べたいものを選んでコースを旅行会社の方と相談して決めます。北海道、沖縄という時もありましたが、香川でうどん作り、新潟でコンバイン体験、名古屋では犬山城とトヨタ工場、東山動物園に分かれて見学を楽しむ年もありました。自分たちで旅行を計画していく体験は専攻科の研修旅行に引き継がれます。専攻科では夏季合宿をしなくなった代わりに毎年旅行を計画します。予算も考えると、場所や宿泊数、宿泊場所も限定されることを知ります。20数名で行きますので行きたい場所を決めるためのオリエンテーションをグループごとにして多数決で決めますが、見学や体験の場所は3~4のグループに分かれることが多いです。事前に調べて実際に体験し、発表し合う学習です。

家族旅行やプライベート旅行では味わえない、友だちとならやってみようと少しでも許容範囲や楽しみの幅が広がるとまた人生が豊かになると思います。写真やパンフレットをいつまでも大事にしているという卒業生の話を聞くと「楽しかったね。」「おいしかったね。」「きれいだったね。」「怖かったね。」など友だちと思い出を共有することの大切さを改めて実感します。今回楽しくてきれいでおいしい旅をご一緒させていただき、身も心も豊かになりました。来週は中学部3年生との日光鬼怒川の旅です。愉快な旅になりそうでとても楽しみです。

 

平成27年10月「運動会」

 10月3日(土曜日)は、本校の運動会です。第66回になります。昭和25年の開園当初から毎年続いていますので、本校では一番歴史のある行事です。

三木先生編集による旭出学園教育双書⑤「行事による教育」(1984)には、次のような一文が記されています。「一つ一つの行事が、人間として生きていくうえで必要不可欠な数々のことを、単なる要素的な知識ではなく、体験を通しての総合的な理解として身につけるテーマとして取り上げられている。『人間尊重の教育』の精神が、脈々とそうした行事の教育の根底に流れていることを読み取っていただけたら幸いである。」上野一彦先生によるまえがきです。

各学部による演技種目は、恒例のものがほとんどですが、教員は、子どもの実態に合わせて、どう成功体験に導くか、できなかったことが練習を積むことでできるようになるという道筋を一人一人に描きながらどのように支援をすればようかを考え、変化を加えます。たった30秒程の「かけっこ」にもゴールまでまっすぐ走るまでのサクセスストーリーがあります。去年できなかったことができるようになった姿を会場が一体となって声援をおくる時、喜びを分かち合う瞬間になります。

毎年紅組白組に分かれて得点を競いますが、「応援合戦」も種目の一つです。各組団長が選ばれ「エールの交換」や「応援歌の披露」などのパフォーマンスは見せ場です。今年の団長は小学部からの友達同士で、クラスメイトの高校2年生が紅白で選ばれました。二人は団長になったことにプライドを持ち、一生懸命声を出し、三三七拍子のポーズをとります。互いに負けたくないという気持ちも見て取れます。くぐもっていた言葉がはっきりして来たり、ポーズが大きくなったり、この3週間ほどでお互いを認め成長し合ってきました。リハーサルでの様子を見ると、もう立派なライバルです。

運動会は、見て演じて楽しい集いであると同時に、児童・生徒の身体的発達と人間形成の発表の場でもあります。運動会に向けての準備や練習を通して、または運動会を契機にして児童・生徒の心と体の成長や発達が見られます。そのための指導支援を考えていくことで教員も成長することができます。

さて、今年はどちらの組が勝つのでしょうか。二人の応援団長にもご注目ください。

 

平成27年9月「買い物学習」

 夏休みが終わり、また児童生徒のにぎやかな声が学園に戻ってきました。

と言っても、本校では8月の下旬に中学部、高等部は夏合宿に出かけます。かつては長野県にあった都立の聖山宿舎をお借りしていましたが閉鎖されましたので、ここ数年は練馬区のベルデ軽井沢を使わせていただいています。専攻科も後期の始まりをその時期に合わせていますので8月末の1週間は登校日があり少し早めににぎやかにはなっていました。小学部も2日間登校日があります。

全体活動で、いつものように朝の会や朝の歌や体操をしたり、クラス活動ではお掃除をしたり、買い物に行ったりしました。長い夏休みがそろそろ終わって学校が始まるよという、切り替えの時期です。少しでも学校生活を再開することで2学期のスタートがスムーズになります。

1、2年生のA組6名の「買い物学習」に同行させてもらいました。B組やC組は、それぞれスーパーやコンビニへお弁当を買いに行きました。さて、A組が向かったのは、少し歩いた公園のそばの自動販売機でした。コンビニだと商品が多く何を買うのか混乱してしまうこと、商品に直接触れることでこだわり行動に走ってしまう、お店の中で順番に待つことなど現在のA組さんにとっては、「飲み物を買う」という目的にのみ対応でき、見渡せる範囲の中に選択肢が並んでいる自動販売機は、素晴らしい教材でした。お財布には百円玉が二枚入っていて首から下げている子も、ポケットに入れている子もいます。「一人ずつ順番に買います。よく見て好きなものを選びます。買いたい人は手を上げてください。」「ハイ」と意思表示した子から買いました。道路の端によって待つことの練習と同時進行です。こちらの方が態度形成のためのおおきな課題になりますが、まず何があるのか見渡してこれと決め、自分のお財布から百円玉を一枚ずつ出して投入します。ほしい飲み物のボタンを押します。「え、香ばし麦茶なんだ、渋い!」という子もいれば、「やっぱりぶどうジュース、好きだよね。」という子もいて、意外にみんなちら見のようでもしっかり選んでいました。「上手にできました。」とほめられる様子を見ることで何をすればよいかを学んでいる様子もありました。お釣りをしまうところまでにはまだ経験を重ねたいですし、一人一人使いやすい財布を選ぶことも大切な支援だと思いました。自分で選んだ飲み物をしっかり持って帰る姿には「やったぞ!」が漂っていました。

 ごっこ遊びではなく、本物のお金を使い、生活現場で必要な経験の積み上げを支援していくことが、本校が大切にしている「生活学習」なのだとA組さんに教えてもらった、夏の一日でした。

 

平成27年8月「巡り巡るもの」

 本校も、7月17日に1学期の終業式を終え、夏休みに入りました。子どもたちの姿が消えたグランドの草は伸び放題というところです。教職員チームで草刈りが行われたり、校舎の片づけが始まったり、学期終了後の季節の風物詩というところです。せっかくの夏休みです。子どもたちも私たち職員も旅行に行ってリフレッシュしたり、目標達成に取り組んだり、普段できないことにチャレンジして、心も体も満たされる夏休みにしてほしいと思います。

この歳になってたくさんの失敗も経験して思うことですが、「思い立ったが吉日」「チャンスは逃すな」です。とにかく次の機会はいつ来るか分からない、多分来ないかもしれません。前髪を逃し後ろ髪を掴もうとしたら禿げていたということです。やらない後悔は解消されませんが、やってみた失敗は次に進むことの道標になります。初めから完璧なものは望まず思いついた範囲で時を逃がさず実行することが後で振り返ると大事だったりします。

職員の何人かが通う大泉学園駅近くの美容院に、大泉南小の卒業生が働いているそうです。声をかけられ、懐かしい卒業生の名前もしっかり覚えていてしばし思い出話に花を咲かせたと職員より報告を受けました。「公園清掃中に追いかけっこをして先生に注意されたんですよ。○○さん今どうしてますか。」と気にかけてくれました。その卒業生はファミレスに就職して今も頑張っていることを伝えるととても喜んでくれたそうです。大泉南小学校6年生と高等部・専攻科との作業交流を始めて15年程が経過しました。前校長の星先生が「この子たちがいつか旭出に通う子どもたちを支えてくれる大人に育つこと」を願って種をまくチャンスと捉えて交流学習を始めました。交流を楽しめる子もイライラしてしまう子もいますので賛否両論でしたが、実際に作業交流をした後の小学生の作文には毎回「怖いと思ってたけど怖くなかった。」「作業ができる先輩なんだ」「ゆっくり話せばわかってくれる」「私たちと同じだ」などと書いてあることが多く障がい特性の理解が広がったことを実感できます。十数年の時をかけてゆっくりと芽を出し育ってきたことに巡りあえたようなうれしい出来事でした。

 

平成27年7月「保護者のお話 ひとりひとりの物語」

  春の「公開授業・進学相談会」が無事終了しました。本校への進学に関心のあるご本人や保護者に本校の教育実践の見学に参加していただきました。今回は、合わせて100名近い方々が来校されました。ご参加されたみなさま、ご協力いただいた本校保護者のみなさまに感謝いたします。

「見学会」は小学部への入学者が減少傾向にあった20年ほど前から始めました。入学された保護者から「旭出学園を知りませんでした。」という声を聴くことが多く、本校に在籍している保護者の方々からの口コミから入学につながる方がほとんどでしたので、まず旭出学園を広く知っていただくことをねらいに開催してきました。各部の教育方針を伝え、実際に見てもらい質問などを受ける形で各部毎に春と秋に行っています。

公開授業に何度も参加され、お子さんと似たタイプの児童や生徒がどのように成長されるかを見極めて入学を決断されたという保護者もいらっしゃいました。実際の学部の様子を参加者に同行して見る時、たいがいは何かが起こります。お客さんに緊張したり興奮したりいつもと違うことが嫌だったり、うれし過ぎたり落ち着かない様子になりますが、教職員が落ち着いて対応している様子を見ると、何事もなく過ぎる事よりもその場の出来事に教員はどう対応するのかを保護者は冷静に観察していると思います。「子どもも先生たちも笑顔が多い」「子どものペースに合わせている」「やらされている感じがなく楽しそう」などの感想を多くいただきます。

「旭出に通わせている保護者の方の話が聞けたらよかった。」というご意見をお聞きし、さっそく各部の保護者の方の話をお願いしました。誕生からの歩み、子育ての戸惑い、学校選択の迷いや悩み、決断に至るまで、入学後の様子など、「どうぞ思うことを何でも話してください。」という要望にこれまでたくさんの保護者の方が応えてくれました。「親御さんの話が聞けて学校に対する理解が深まった。」「親の想いは皆同じ。」毎回、大きく頷かれたり、涙を流されたり、保護者としての想いを共有される様子があります。どの子にもその子が主人公の物語があります。親の深い思いがあります。旭出を選んでくれた理由も再確認できます。今回も4人のお母様にそれぞれの心温まるお話をいただきました。「感激しました。」「生まれてからこれまでのことが思い浮かび涙しました。」「何でも話せる保護者と学校の関係がわかりました。」等のご意見も頂戴しました。

私立の学校は本人と保護者に選ばれる学校です。さらに保護者が協力してくれる学校です。この大切な精神に誇りを持ち、入学された子どもたちがこれから綴る物語に寄り添いたいと思います。

 

成27年6月「水無月」

  もう六月になります。旧暦では「水無月」というようですので語源を調べてみました。梅雨明けの快晴が続く「水の無い」時期をさすという説もあるようですが、一般的には、「水の月」、田んぼに水を引き、田が潤う頃にあたるので「水無月」となったという説が有力のようです。

 本校にも小さな田んぼがあります。高等部では稲の学習をするために校内に観察用の田んぼを作っています。毎年作りかえますが、土を掘り返し、ふるいにかけ、腐葉土を混ぜて戻します。新しくなった田んぼに苗を植えます。田植えです。稲の学習を始めた時、現在中学部の麦畑の場所に小さな田んぼをつくりました。梅雨の時期にはグランドまで水があふれ、石神井公園の鴨たちが校庭に飛んできたこともありました。空の上からだと広い水たまりに見えたのでしょう。

 本物の田んぼで田植えや稲刈りの体験をさせたい、日本の米作りに直接触れることで感じることはたくさんあると学部教員たちが話し合い、職員の実家である茨城県の野友さんの田んぼで体験させていただくことになりました。これまで十五年近く毎年、田植えと稲刈りの体験学習をさせていただいています。夏の草取りや管理は野友さんにおまかせでおいしいとこ取りの体験です。野友さん宅では一家総出で歓待していただいています。旬の漬物や豚汁をごちそうになり、人も自然も田舎のいい風に吹かれてきます。初めての体験では田んぼに入れなかった生徒も、2年、3年となると苗をぐっと泥の中に差し込むことができるようになります。ここにも繰り返して体験を重ねることで見通しを持ち、主体的に参加し活動を楽しむ子どもたちの姿があります。「来年僕たちはもう来ません。2年生はよろしくお願いします。」と後輩に託した生徒もいました。「受け継ぐこと」の意味を考えさせられます。一度休んだ田んぼを復活するのはまた一からなかなかの重労働です。荒れた田畑が増えてしまうのは国としてもよいことのようには思えません。田舎が生き生きしていることが土台にあって、都会で暮らすことが支えられているのだと改めて思います。

 今年も5月上旬、広い田んぼで高等部の田植え体験がありました。もち米を育て、新年会で餅つきをして全校でいただきます。水潤う田んぼで稲はすくすくと育つ頃です。今年も豊作でありますように。

平成27年5月「三木先生を偲ぶ」

  旭出学園は、毎年創立記念行事として「青葉のつどい」を開催しています。

今年は、「第65回 青葉のつどい」を5月23日(土)に行います。学校法人 旭出学園と社会福祉法人 大泉旭出学園が合同で行います。

 「旭出学園の創立はいつですか?」というご質問を受けました。私塾的な学園として目白の尾張徳川邸のお庭に開園したのが昭和25(1950)年4月でした。14名のお子さんの入園式は4月9日に行われました。その後お子さんの成長と共に学園も成長し、現在の練馬区東大泉に移転したのは昭和37(1962)年です。それより先に学校法人として「旭出養護学校」の認可が告示されたのは昭和35(1965)年5月30日でした。この日を創立記念日としています。若葉青葉が繁り風薫る季節に、今後の学園の発展を期し、学園についての理解を深めてもらうために「青葉のつどい」として創立記念行事をしてまいりました。昭和59(1984)年5月31日、三木先生が逝去された日です。何かしらの因縁を感じます。以来青葉のつどいは、創立をお祝いするとともに、三木先生を偲ぶ日にもなりました。

 毎年、各部で子どもたちが青葉のつどいのポスターを描きますが、三木先生の写真を見ながら描いたたくさんの三木先生の肖像が園内に飾られます。大きな三木先生、お若い感じの三木先生、おしゃれな三木先生、スマートな三木先生、まあるい三木先生、子どもたちの中にいる三木先生は様々です。何年か前からロボット型の四角くて歩くし踊る三木先生も登場しています。ゆるキャラとして人気が出そうな風貌です。是非「青葉のつどい」にいらっしゃいましたら探してみてください。一味違う三木先生の偲び方が加わりました。