生徒の造形活動に、どれだけ教員が手を入れるか…
どこまで彼らに任せて、どれだけこちらの意図を反映させるか。
これは、図工・美術教育において永遠のテーマだと思います。
作品は、おうちの方が見ますし、掲示すれば多くの親御さんや見学の方の目に触れます。
コンクールに出せば、審査もされますね。
大人が喜ぶ作品になるよう、見栄えよく仕上げることが正しいのか。
彼らが、楽しい時は楽しいままに、めんどくさい時はめんどくさいままに、
あるがままに表現した痕跡が素晴らしいのか。
岡本太郎さんは、「大人のためにお利口な絵を描いてもしょうがない」と言っていました。
でも、大人の目を全部無視はできないですよね!?目があるからこそ育つ部分もあるしね!
関口自身も、常にそこで悩み、葛藤しながら指導に当たっています。
そこに悩むことこそ、美術担当の仕事だと思います。
この悩み、つらいわけではないのです。
いろいろ矛盾もありますが、その矛盾が楽しかったりもするのです。
そんな中、取り合えず関口が持っている、美術の授業の指導のルールの一つ。
教員は、監督であり、選手ではない。だから、試合中にバットを持ったり、ボールを投げたりしない。
造形活動中は、生徒が選手です。私は監督。
だから、彼らの手を取って動かして描かせたり、
私が描き足したりは、原則としてしません。
ただし…「触れる」以外の方法で、こちらの願いを伝えることはよくあります。
声やジェスチャーにおいてですね。
「こっちに線をひっぱってみよう、びゅーっと!!」
「ぐるぐるっと!!」
「がーっと!!」
「ぶわーっと!!」
生徒の手には決して触れず、それでもこちらの願いを伝える…
それはカーリングに似ています。
デッキブラシみたいなやつで丸い石のコースをシャカシャカ磨いて、狙ったところに着地させるのです。
今日紹介した絵は、高等部3年生男子が美術クラブで描いたものです。
彼は、中学生のころは、同じところに幾重も絵の具を塗り重ねるスタイルの描画をよくしていました。
久々に一緒に絵を描きました。
同じところに重ねるのは、もういいだろう!と思い、
「線を引いてみよう!びゅーっと!」
と声をかけると、きれいにかすれたストロークを見せてくれました。
その「びゅーっと!」という声かけを繰り返すと、
線を引く方向を彼自身でうまく移動させながら、
虫の薄い羽根のような、きれいな絵を仕上げました。
これはもっと多量の絵の具を使い、
「ぐあーっと!!」
という声かけをしたときのものですね。
今日は卒業式でした。
卒業された方々、おめでとうございます!!
旭出から巣立って行かれた方、なるべく皆の作品を紹介したかったのですが、
手が回らず、全員とはいきませんでした。すみません。
これからもよろしくお願いします。
(関口光太郎)